2007年06月27日

諸田玲子作「鬼あざみ」

 今年初めに諸田さんの講演会に行ったとき、「悪女を違った目・観点で描きたい」といっていたがこれもそのシリーズのひとつとも思える。 

 洪水で一緒に流された弟をあえて自分が助かるために殺した女”おもん”が11代将軍家斉の時代に江戸に出て、獄門台にさらされた盗賊"葵小僧"の首に憧れ、身体が大きく悪人面ではあるが根は真面目な"清吉"を「悪の首領」に育て江戸を騒がせ、そして破滅していく物語。

 タイトルとなっている”あざみ”はこどものころ住んでいた田舎にたくさん自生していたことや前半の舞台が"もぐさ屋"であり葉っぱが"もぐさ"に似ていること、"清吉"が刺青として"あざみ"を彫ったことなどからきている。
 また"清吉"が捕らわれて処刑されるときの辞世の句は「武蔵野の色にはびこりし鬼あざみ けふの暑さにやがてしほるる」となっている。
 
 "鬼あざみ"で検索したところ、"清吉"は実在の盗賊で、職業は魚売り(物語ではもぐさ売り)、辞世の句も残しており雑司が谷霊園に立派なお墓がある。昔は博徒、今は受験生がその墓石を削って持っていくという。
 どうやら諸田さんは実在の盗賊"清吉"を"おもん”という"悪女の観点"から描きたかったようだ。



Posted by 風車 at 20:34│Comments(0)
 
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諸田玲子作「鬼あざみ」
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